なぜ、施策を増やしても成果につながらないのか

施策を戦略に集約する構造のイメージ

SEO、リスティング広告、SNS、メールマガジン、展示会、動画、プレスリリース。「成果が出ていないから、新しい施策を足そう」と取り組みを増やしてきたものの、売上や問い合わせは思うように伸びない。担当者の忙しさは増す一方で、何が効いていて何が効いていないのか、自信を持って説明できない。そんな状態に心当たりはないでしょうか。

施策を増やしても成果につながらないとき、問題は施策の数や質ではなく、施策の手前にある「課題の捉え方」と「全体の設計」にあることが少なくありません。

この記事では、次の内容を整理します。

  • 施策を増やしても成果が出にくくなる4つの構造
  • 成果が出ない本当の原因を見つける「ボトルネック」の考え方
  • 施策を足す前に行う棚卸しの手順と、続ける・直す・やめるの判断基準
  • 施策を絞ったあとの、小さく回して検証する進め方
目次

施策を増やすほど成果が出にくくなる、4つの構造

施策を増やすことは、一見すると前向きな取り組みに見えます。実際、「足す」という判断は、「やめる」という判断よりずっと下しやすいものです。新しい施策は成果への期待と「動いている」という実感を与えてくれますが、やめる判断には責任が伴うからです。また、他社の事例や新しい手法の情報は、日々目に入ってきます。「自社もやらなければ」と感じる機会は増える一方です。

しかし、次のような構造があると、足すほど成果から遠ざかることがあります。

1. 施策ごとに目的がバラバラになっている

SEOは「検索流入を増やすこと」、SNSは「フォロワーを増やすこと」、広告は「クリックを獲得すること」。施策ごとに担当者が目標を持つと、それぞれが頑張っていても、事業全体として何を解決したいのかがあいまいになります。各施策の目標を達成しても、売上や利益に届かないのはこのためです。

たとえば、SEOの担当者は検索順位を、広告の担当者はクリック単価を、SNSの担当者はフォロワー数を追っていて、誰も「問い合わせ数」を見ていない、という状況です。

2. 施策同士がつながっていない

たとえば、広告で集めた人が訪れるページと、SNSで期待を持たせた内容が食い違っていたらどうなるでしょうか。集客の施策と、受け止める側(サイト、営業、接客)が別々に設計されていると、入口を増やしても途中で離脱が起きます。施策は単体ではなく、顧客が進む流れの中でつながってはじめて機能します。

3. 検証ができない状態になっている

同時にたくさんの施策を動かすと、どの施策が成果に影響したのかが分からなくなります。担当者の時間も分散し、一つひとつの施策を振り返る余裕がなくなります。結果として、「なんとなく続けている」施策が増えていきます。

そもそも、施策を始める前に「何がどうなれば成功か」を決めていないことも、検証を難しくする大きな要因です。

4. やめる基準がない

新しい施策を始めるときは議論されても、やめるときの基準が決まっていない会社は少なくありません。一度始めた施策は、理由がなくても続くものです。増える一方の施策が、人と予算の余力を奪い、本当に必要な一手に取り組む余地を狭めていきます。

ここまでの4つは、担当者個人の努力や能力の問題ではありません。施策を決め、見直す「仕組み」が整っていないことで起きる、組織の構造の問題です。

施策を増やした状態と、課題から絞った状態の比較図。左は目的がバラバラな施策、右は事業課題から施策を絞った流れ
図1:施策を増やした状態と、課題起点で絞った状態

本当の原因は「ボトルネックの見誤り」にある

集客が足りないとは限らない

成果が出ないとき、多くの会社は「もっと集客が必要だ」と考えます。しかし、顧客が購入や契約に至るまでには、認知、関心、比較検討、問い合わせ、成約といった複数の段階があります。どこか1つの段階が詰まっていれば、入口をいくら広げても、成果は増えません。水を注ぎ続けても、途中に詰まりがあれば先へ流れないのと同じです。

たとえば、サイトへのアクセスは一定数あるのに、問い合わせがほとんどない会社があるとします。この場合、課題はアクセス不足ではなく、「何を頼めるのか」「どんな会社なのか」「次に何をすればよいのか」が伝わっていないことかもしれません。そこでさらに広告を足しても詰まりは解消されず、費用だけが増えていきます。

採用でも同じことが起こります。応募が集まらないとき、求人媒体を増やしたくなるかもしれません。しかし、求人票を読んだ人が「この会社で働く自分」を想像できなければ、媒体を増やしても応募は増えにくいでしょう。詰まっているのは応募者の数ではなく、伝え方かもしれないのです。

認知、関心、比較検討、問い合わせ、成約の5段階のうち、一つの段階が詰まっている例を示した図
図2:入口を広げる前に、詰まっている段階を探す(例)

詰まりを見つけるための3つの視点

  • 数字で見る: 各段階の人数や割合を並べ、極端に低い段階や、以前から変化のない段階を探します。
  • 顧客の声で見る: 購入した人、見送った人、問い合わせをためらった人の理由を集めます。
  • 現場の感覚で見る: 営業や接客の担当者が、「ここで話が止まる」と感じている場所を聞きます。

数字だけでは原因が見えないこともあります。数字と現場の声を重ね合わせて、仮説を立てることが大切です。

ボトルネックの仮説は、小さく確かめる

詰まりの仮説が立ったら、その段階を改善する施策を1つ選び、最小限の形で試します。仮説が外れることもあるため、最初から大きな投資はしません。結果を見て、仮説を修正しながら進めます。ほかの施策は、維持するか、いったん休止するかを決めておきます。

施策を足す前にやる「棚卸し」の手順

新しい施策を考える前に、いま動いている施策を整理します。手順は次の3ステップです。

  1. すべての施策を書き出す。 担当者が個人で続けているものも含め、実施中の施策を一覧にします。
  2. 4つの軸で整理する。 各施策について、目的、見る指標、かけている時間と費用、現時点での手応えを記入します。
  3. 「続ける・直す・やめる」を判定する。 目的が事業課題につながっているか、指標で効果を確認できているかを基準に判定します。

記入のイメージを、次の表に例として示します。

施策(例)目的見る指標判定の例
メールマガジン既存顧客の再購入を促す開封数、再購入の件数続ける
SNS(担当者が個人で運用)認知の獲得(目的があいまい)見ていない直す:目的と指標を決める
展示会への出展新規の商談獲得商談につながった件数次回の前に効果を確認する

表の内容は記入のイメージであり、実際の判定は自社の状況によって異なります。

棚卸しを進めるときの注意点

  • 担当者の責任を問う場にしない。 目的は施策の良し悪しを裁くことではなく、現状を正しく把握することです。
  • 費用だけでなく、時間も書き出す。 広告費のように見える費用だけでなく、担当者が割いている時間も施策のコストです。
  • 完璧を目指さない。 分からない項目は「不明」と書き、それ自体を課題として扱います。

棚卸しのあとで、施策を「顧客の流れ」につなぎ直す

施策を一覧にするだけでなく、顧客が進む流れ(認知、関心、比較検討、問い合わせ、成約)に沿って並べ直してみてください。各段階でどの施策が担っているのか、担当は誰か、何の指標で見ているのかを1枚で見ると、手厚すぎる段階と、誰も担当していない段階が見えてきます。施策が増えた会社ほど、入口に偏り、検討や成約の段階が手薄になっていることがあります。

「やめる」「絞る」を決める基準

やめる・見直すかどうかの基準の例

次のような状態にある施策は、見直しの候補になります。

  • 目的が説明できない:何のために行っているのか、担当者以外に説明できない。
  • 指標がない、または見ていない:効果を判断する材料がない。
  • 決めた期間続けても変化がない:あらかじめ決めた期間で、手応えが確認できない。
  • 事業課題との関係が薄い:いま解決したい課題と結びつかない。

「やめる」ことに抵抗がある場合は、「いったん休止する」「期間を区切って試す」ことから始めても構いません。

絞るときの優先順位の考え方

残す施策を選ぶときは、次の3つの観点で見ます。

  • 事業課題との近さ: いま最も解決したい課題に直結しているか
  • 期待できる影響の大きさ: うまくいった場合に、事業への影響が大きいか
  • 実行の負荷: 自社の体制と予算で、無理なくやり切れるか

たとえば、ボトルネックが「サイトで何を頼めるのかが伝わっていないこと」だと仮定します。この場合、新しい広告の出稿よりも、サービス紹介ページの見直しのほうが、事業課題に近く、少ない負担で実行できる可能性があります。このように3つの観点を並べると、先にやることと、後回しにすることが見えてきます。

ボトルネックの解消に直結し、かつ実行できる施策から先に取り組みます。優先度の低いものは、「やらない」と決めて手放します。

やめたあとに生まれた余力の使い方

施策をやめたり休止したりすると、担当者の時間と予算に余力が生まれます。この余力を新しい施策に回さず、ボトルネックの解消に集中させることが重要です。余力を別の施策に振り分けてしまうと、再び施策が増え、同じ状態に戻りかねません。

絞ったあとは、小さく回して検証する

施策を足す前の4つの問い

新しい施策を追加する前に、次の4つに答えられるかを確認します。すべてに答えられるときに、はじめて足すかどうかを検討します。

  • 解決したい事業課題を、一文で説明できる
  • その課題のボトルネックがどこにあるか、数字と現場の声で確認している
  • 既存の施策について、続ける・直す・やめるの判定を終えている
  • 新しい施策がボトルネックの解消に直結すると、根拠を添えて説明できる

検証のサイクルを決めておく

施策は、始める時点で「いつ、何を見て、どう判断するか」を決めておきます。たとえば1か月ごとに数字を確認し、3か月で続けるかどうかを判断する。そう決めておけば、結果が出てから迷う時間が減ります。

あわせて、月に一度、短い振り返りの場を設けます。見るのは、事前に決めた指標、続ける・直す・やめるの判断、次の月に試すことの3点だけです。長い会議にせず、判断を残すことを目的にします。

一度に動かす施策は少なく保ち、結果を見て次の手を決めます。MEDIRECTが「課題を整理し、やらないことを決め、実行から改善まで伴走する」ことを重視するのは、この循環が回ってはじめて成果につながると考えているからです。

経営者・事業責任者にできること

施策の追加や終了の判断を、担当者だけに委ねないことも重要です。事業課題を判断の基準として示し、「やらないこと」を明言する。担当者が迷ったときに立ち返れる基準があるだけで、施策が増え続ける流れは止めやすくなります。

まとめ

施策を増やしても成果につながらないのは、担当者の努力が足りないからではありません。施策ごとに目的が分かれ、施策同士がつながらず、検証もやめる判断もできない構造の中で、ボトルネックを見誤ったまま手数だけが増えているからです。

新しい施策を足す前に、いまある施策を棚卸しし、ボトルネックを特定し、続ける・直す・やめるを決める。そのうえで、絞った施策を小さく回して検証する。施策を増やす発想から、課題に対する最善の一手を選ぶ発想へ切り替えることが、成果への近道です。

自社の場合は何から始めるべきか、課題の整理からご相談いただけます。まずはお問い合わせください。

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